いつか起業したいと思っている人や、独立での開業を目指している人の数は増えているのではないでしょうか。実際に、新設法人の数は年々増加しており、2014年と2015年の新設法人数を比較すると、約5,000もの増加を見せています。
しかし、「起業したい」と思っていても、実際に起業するにはどのような手続きをするのか、心構えを持てばいいのかわからないという人は多いでしょう。今回は、コロナウィルスの影響で、起業をする前の手続きや心構えについて紹介しようと思います。起業を志す人の参考になれば幸いです。
起業のメリット・デメリット
起業にはメリットもあればデメリットもあります。双方を冷静に捉え検討することが大切です。
起業のメリット
起業のメリットを一言で表すと、「会社による制約がなくなること」と言えるでしょう。具体的には、事業内容・時間・金銭に関する制限がなくなります。もちろん、事業内容は自分で決めることができますし、時間の使い方も自分でコントロールできるようになります。自分が「する必要がない」と考える業務に時間を取られることもありません。また、定年という概念がなくなるので、心身ともに健康な状態である限り、いつまでも働き続けることができます。
金銭面での自由度も高く、報酬の上限はありません。事業の利益が自分の収入に直結し、頑張り次第では大きなリターンを得るチャンスもあります。
起業のデメリット
メリットの裏返しとして、「会社の後ろ盾がなくなる」というデメリットがあります。すべて自分で決められる裁量を得る一方、「自分で決めなくてはいけない」「上司に頼れない」という責任やプレッシャーが増大することは間違いありません。当然、給与という安定した収入源がなくなるため、事業が軌道に乗るまでは収入が大きく減るリスクもあります。
また、起業することによって、「会社員」という立場だからこそ得られていた「社会的信用」がリセットされることがあります。たとえば、住宅や車のローンやクレジットカードの審査に通らなくなることがあるので気をつけましょう。会社員と同様の社会的信用を再構築するためには、数年にわたる安定した事業継続が必要となります。
起業をするときのアイデアやネタはどうする?
起業をするときに、まず考えるのはビジネスモデルやどのような業種で起業をするのかということではないでしょうか。まずは起業時のアイデアについて紹介していきます。
自分の得意分野を起業のアイデアに活かす
一番多いパターンとしては、起業をするときに自分の得意分野を起業のアイデアにそのまま転用するケースではないでしょうか。例えば、コンサルティング会社で努めていた人が独立するケースなどはこれに当てはまるでしょう。
自分の得意分野であれば、他の人・会社では出せないような特色が出せるかもしれません。もし何か得意なことがあるのであれば、それを起業のネタとしてみるといいでしょう。
自分がやりたいことを起業のネタにする
今やっている仕事とは別に、将来はこういう仕事がしたいと思っている人は、それを起業のアイデアに転用すればよいでしょう。例えば、将来は飲食店がやりたいと思っている人であれば、それをそのまま起業のアイデアのベースとして利用してみるとよいでのはないでしょうか。
自分が困っていることを解決する
自分が困っていることを解決するために起業するケースも多いと思います。自分が困っていることというのは、自分ひとりが困っていることは少なく、そこには困っている人が少なからずいくらかおり、そこにニーズが存在します。こうした方法で起業する人も少なくありません。
身近な人に聞いてみる
これは自分の困りごとの解決の発展型でもありますが、身近な人がどういうことに困っているのか、もしくはどういうものやサービスを欲しがっているのか聞いてみたり、観察してみたりするのもいいでしょう。自分にない視点が入ることで、よりよい起業のアイデアになるかもしれません。
成功事例からヒントを得る
成功事例からヒントを得るのもいいかもしれません。例えば、海外で成功した事例を活かして日本で起業をする、などといったケースはこれに当てはまるでしょう。
ただ、そっくりそのまま持ってきても成功する可能性は低いでしょう。自分なりのアレンジや、海外の事例を参考にしたのであれば、日本らしいアイデアにするにはどのようにすればよいのか考えることをおすすめします。
流行や時代の流れに乗ってみる
流行や時代の流れに乗って起業のアイデアを考えるという方法もあります。たとえば、近年ではシェアリングエコノミーが浸透し始め、民泊のビジネスなども以前より始めやすくなりつつあります。こうしたところに活路を見出して起業をし、軌道に乗り始めてから自分のやりたいことに移行するのも面白いと思います。
「起業をしたい」ということを目標とするパターンが陥りやすいのが、起業をした段階で燃え尽きてしまうことです。アイデアを起業する前に考えておくことが、起業をしたあともモチベーションを持ち、会社運営をしていくことにも繋がるでしょう。
起業をするために必要な資金集めについて
起業するアイデアがあっても、資金がなければ起業をすることができません。それでは、起業の資金集めはどのようにやればいいのでしょうか。
理想は自己資金で賄うことだが…
理想としては、自己資金だけで起業のための資金をすべて用意できればよいのですが、なかなかそうはいかないと思います。会社設立時にかかる資金は登記時の金額だけでなく、オフィスや設備投資なども含まれるため、膨大な金額となります。
起業時の資金調達では、自己資金比率などを審査対象とするケースもありますので、全て自己資金で、というのは難しいかもしれませんが、開業資金の1/3程度を目安として自己資金を用意しておくと安心です。
補助金・助成金などを利用する
近頃は、起業する人を増やす目的で、国や地方の自治体が創業時に申請することができる補助金や助成金を用意しています。業種や期間などの要件は様々となりますが、起業する際に自分の会社が適合するのであれば、申請してみてはいかがでしょうか。
投資家からの出資
個人投資家やベンチャーキャピタルから融資を受けるという方法もあります。投資家やベンチャーキャピタルは、上場によってリターンを得るケースがほとんどですので、しっかりとした事業計画を持ち、最終的には上場を目指すことができるようなビジネスモデルがないと調達は難しいでしょう。
クラウドファンディングで資金を集める
最近増えてきているのが、クラウドファンディングサービスを利用して資金を集めるケースです。クラウドファンディングは、サービスやミッションなどを紹介し、同じ理念を持つ人や理念に共感する人などから資金を集める仕組みのものです。
出資を募ることがマーケティング効果があるものになることや、外部からの評価を起業前に知ることができるメリットもあり、こうした新しい調達方法を利用してみるのもよいでしょう。
自己資金でなるべく賄うことが条件とはなりますが、様々な資金調達の方法が存在し、クラウドファンディングサービスの登場や、活発な補助金・助成金の募集などもあり、資金調達は難しくない時代になりました。起業をしようと思ったら、このような資金調達方法を念頭において考えてみてはいかがでしょうか。
資金とアイデアは揃った!手続きはどうする?
資金繰りやアイデアについては上記で説明しましたが、実際に起業するためには手続きが必要になります。以下では、起業をするための手続きについて紹介します。
会社の概要を決めていく
起業をするためには会社設立の手続きが必要となります。会社設立の手続きとしてまずすべきなのが定款の作成になります。定款は、会社の決まりのようなもので事業目的や会社名、所在地などを決める必要があります。
事業目的や所在地などはすでに決まったものがありそうですが、会社名については悩む人が多いようです。ドメインが取得できるものか、検索しやすく覚えやすいものかなど、実際に社名にして覚えやすいものにしておくとよいでしょう。
印鑑の購入をする
会社を設立するためには、定款に印鑑を押印する必要があるため、法人の印鑑が必要になります。一般的には、印鑑は定款に押すための法人実印と銀行用の印鑑、請求書などに押す角印を用意します。
資本金の払込みをする
資本金をいくらにするのかを決め、払い込みをします。出資者が自分以外にいる場合、その出資者の住所や印鑑証明書が必要となります。その点についても留意して手続きをすすめていきましょう。
定款を提出する
定款に記載事項を記入し、印鑑などの準備が終わればいよいよ定款の認証になります。作成した定款は原始定款と呼ばれるもので、認証を受けるまでは効力を発揮しません。そのため、公証役場で定款の認証を受け、効力あるものにする必要があります。
また、認証を受けた定款は法務局に提出する必要があり、法務局での認可が行われて正式に会社の設立となります。
社会保険や税の手続きも忘れずに
設立が完了しても、会社設立の手続きは続きます。会社に関する税の手続きをするために税務署に法人設立届出書を提出したり、社会保険に加入するために年金事務所や労働基準監督署に行く必要があります。
成功・失敗している起業家の共通点
先人に学ぶのは、起業を考える上でも、とても有効です。以下、成功している起業家、あるいは失敗している起業家の共通点から、自身が補わなければいけないもの、対策が必要なものを確認してみましょう。
成功している起業家の共通点
【共通点1】 明確な起業目的を持っている
成功している起業家の多くは、明確な起業目的を持っています。言い換えれば、「強い意志を持っている」と表現できるかもしれません。「こうなりたい」「こういうことを実現したい」というブレない軸がある起業家は、判断に迷いがなく、迅速に行動することができます。また、失敗しても立て直せる強さがあるため、簡単に諦めることがありません。明確な目的を持つことが、成功の必須条件と言っても良いでしょう。
【共通点2】 自分の強みを知っている
コミュニケーション力のある親しみやすい人、行動力のある人、寡黙な技術者気質の人…。起業家には色々なタイプがいますが、成功している起業家に共通しているのは自分の強み・特徴を理解し、事業に活かしていることです。苦手なことは人に任せて、自分の得意な領域で最大限のパフォーマンスを発揮する。事業を軌道に乗せるためには、そうした合理的な判断が必要となります。
【共通点3】 人脈を広げる努力をしている
普段から人との出会いを大切にしている起業家は、成功する確率が高いと言えるでしょう。人脈が広がることで新しい取引が始まることもありますし、良き助言者やメンターと出会える可能性も高まります。頼れる取引先や助言者は、長くビジネスを続ける上で欠かせない存在です。中には「人付き合いが苦手…」という方もいるかもしれませんが、経営者を目指すなら意識的に人との出会いを大切にしましょう。
失敗している起業家の共通点
【共通点1】 起業の目的が明確になっていない
起業家の失敗例として一番多いのが、このパターンと言っても過言ではありません。自分で事業を始め、継続させていくためには「強い意志」が必要です。そのために、起業目的を明確にすることが欠かせません。「会社が嫌だから」「仲間に誘われたから」「儲かりそうだから」といった軽い気持ちで、目的が曖昧なまま起業をしてしまうと、「起業すること」がゴールになり、短期間で失敗するケースが少なくありません。
【共通点2】 成功体験から抜けられない
事業を立ち上げた後、一度うまくいった起業家に多いパターンです。それまで順調に進んでいた事業が停滞したときに、「前はこのやり方でうまくいっていた」という成功体験に縛られて、取引先や消費者のニーズに対応できないことがあります。過去の成功体験には自信を持ちつつも、物事の変化に柔軟に対応することが重要です。
【共通点3】 経営者としての「見栄」を優先してしまう
「立派な会社に思われたい」という欲求から、分不相応に広いオフィスを構え、無計画に社員を増やしてしまう起業家も少なくありません。事業が好調なときほど見栄を張りたくなるものですが、家賃や人件費などの固定費が負担になり、一気に経営が行き詰まる事例もよく耳にします。特に、起業当初は固定費の支出には慎重になったほうが良いでしょう。
まとめ
今回は起業するためにはどのような手続きをすればよいのか、アイデアや資金調達はどうすればいいのかについてお伝えしました。真剣に起業をしたいと考えるのであれば全て考えて取り組みたい部分になると思います。しっかりと入念に準備をして、事業の成功確率を高めましょう。
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